「人と話すだけで報酬」——Rent a Cyber Friendが示す“人間版コンパニオン経済”のリアル

IT

「1分単位で『おしゃべり』にお金を払う」
そんな仕組みを掲げるRent a Cyber Friend(以下RACF)が、TechCrunch Disrupt 2025のStartup Battlefieldに登場します。
References:TechCrunch

共同創業者は映画プロデューサーのFrancesco Vitaliと長年の相棒Chris Siametis

同社は外部資金ゼロ/広告なし登録300万人を獲得したといい、寂しさが最大の“社会的疾病”になった時代に、あえて“人間”との通話を売りにする——という逆張りの発想です。

報道の要点

  • 仕組み:本人確認を終えた“サイバーフレンド”が自分で1分単価を設定。
    利用者は分課金+チップで話し、プラットフォーム取り分は20%
    RACFは「AIボットではなく人間」を前面に出す。

  • 価格と導線:サイトには「最安$0.10/分」「最初の1分は無料」「E2E暗号化」などの表記。
    アプリはiOS/Android対応。

  • 安全対策ブロック機能は実装済みだが、創業者は審査の強化モデレーション投資が今後の課題だと認める。

  • イベント:10月27〜29日@サンフランシスコのTechCrunch Disrupt 2025でピッチ予定。
    Startup Battlefieldの公式にも企業ページが立っている。

何が新しい?:「AI全盛」に逆行する“人”のマネタイズ

近年はReplikaなどのAIコンパニオンが台頭し、会話の相手は人間→AIへとシフトしてきました。

ところがRACFは「人間の時間には値段がつく」という原点回帰を提示。
創業者の言葉通り、寂しさの市場規模に賭ける戦略です。

実際、RACFで1日$200も使うユーザーが現れた事例が紹介されており、「対面は怖いが、世界の人と文化交流したい」というニーズの受け皿になっているといいます。

他方、規制の風は確実に吹いています。
カリフォルニア州はAIコンパニオンに全米初の包括規制(年少者保護、自己申告のAI表示、危機介入の手順等)を導入

人間相手のRACFは直接の規制対象ではないものの、“心のケア領域に踏み込むサービスの責任”は避けられません。
安全・倫理のベンチマークとして、この新法は参照点になるでしょう。

ビジネスモデルを分解する

収益設計:分課金+20%手数料+チップ

クリエイター経済の常套手段を会話に移植した形です。

1分単価は自由設定最初の1分は無料でハードルを下げる。
プラットフォーム取り分は20%で、引出しは$50以上/処理は最長7営業日という運用(FAQ)が並びます。

E2E暗号化カード決済チップの導線までサイトに明記。
“まず使ってもらい、良ければ継続”の設計思想が見てとれます。

供給サイド:「だれでも講師」に

大学院生や専門職は高単価を掲げ、語学練習・移住相談・留学体験談など準専門領域で稼ぎやすい。

逆に趣味雑談でも、時間に価値が付く。
RACFは“ペンパルの再発明”をうたい、プロフィール×タグ検索で相性の見える化を進めています。

需要サイド:匿名性と即時性

「物理的に会わない」安全感1分単位の微課金“最初の1分無料”のトライアルが背中を押します。

フォロー機能で“お気に入り”に待機し、オンライン通知で呼び出すフローも実装。
瞬発力のある繋がりが売りです。

リスクと論点:健全運用をどう担保するか

  1. 境界の設計——“非デーティング”の維持
    FAQは「RACFは出会い系ではない」と明記。
    とはいえ、親密性の売買はグレーゾーンと隣り合わせです。
    ガイドラインの可視化/違反時の迅速な介入が不可欠。

  2. モデレーションの現実
    創業者自身が「安全対策は永遠の課題」と述べ、ブロック機能はあるが審査強化が次のロードマップと語ります。
    ライブ映像×多言語は監視コストが高く、アルゴ+人手の二段構えが求められる。

  3. 依存と課金
    “1分無料”→少額→継続の動線は使いすぎを招きうる。
    上限設定・休憩リマインド・未成年遮断など、消費者保護のナッジをどこまで入れるかが問われます(AIコンパニオン規制の要件は参考メニューになりうる)。

競合と差別化:RentAFriend世代との違い

RentAFriend等の前世代は対面同行まで含むケースも多かったのに対し、RACFは完全オンライン完結
安全側の“摩擦”(距離・時間・コスト)を最小化しつつ、回数・滞在時間でマネタイズする。

SNSのライブ配信AIボットとも部分的に競合しますが、“人間らしさ”を価値に変換する点にフォーカスしているのがRACFの設計思想です。

利用者・提供者の視点

  • 利用者(Caller)
    • 上限金額を先に決める(プリペイドに近い感覚で管理)。
    • 専門相談資格の有無を確認。過剰期待は禁物。
    • 不快な相手は即ブロック&通報——ためらわない。

  • 提供者(Cyber Friend)
    • プロフィールの作り込み+低単価スタート→段階的値上げが定石。
    • 守秘・境界線(個人連絡先の交換NG、外部決済NG)を徹底。
    • レビュー=資産。短時間でも丁寧なセッションが将来の単価を上げる。

  • 事業者(RACF側)
    • 年齢確認・危機介入・時間上限など“子ども保護”規格の早期実装を。
    • 多言語の有害行為検知(音声・画面・テキスト)を人×機械で回す体制を強化。
    • 「非デーティング」の運用実効性(誘導・性的サービス勧誘の遮断)を指標として公表する。

Disruptで注目すべき3ポイント

  1. LTV/CACの実数:マーケ費ゼロで300万登録というが、有料転換率・継続率が不明確。
    “最初の1分無料”のユニットエコノミクスを聞きたい。

  2. 安全投資ロードマップ審査強化・モデレーション基盤のKPI(審査時間、通報→対応のSLA、再犯率)。

  3. カテゴリ戦略語学・キャリア相談・ウェルビーイングなど、非恋愛領域をどこまで伸ばせるか。専門人材の流入施策も鍵。

まとめ

RACFは、AI化する会話市場人間の価値を再提示する企業です。
分課金×自由価格×最初の1分無料という軽い導線と、300万登録のトラクションは注目に値します。

一方で、“人を相手にする”からこその難しさ——安全・依存・境界線——は、先に資本ではなく運用で解くしかない。

Disrupt 2025の舞台で、人間らしさをスケールさせる設計がどこまで具体的に語られるか。
「会話に値段を」という挑発的な命題の真価が試されます。

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