いま日本でクマ被害が増えている理由と、遭遇したとき「命を守る行動」ガイド

国内

最近、何が起きているのか

人身被害は高止まり
環境省の速報(令和7年=2025年9月末)では、人身被害108人・死亡5人
2023年度は219人・死亡6人と過去最多を更新しており、2025年も深刻なペースです。
被害は北海道のヒグマ、本州のツキノワグマの両方で発生しています。

・10月も深刻事案が連続
10月、岩手県北上市の温泉施設周辺で従業員が行方不明となり、近くで駆除されたクマのそばから遺体が発見。現地報道は“人を襲った可能性”を強く示しています。
また群馬・沼田市のスーパーマーケットにクマが侵入し、買い物客2人が軽傷
人の多い商業施設での事案として注目されました。
夏には知床・羅臼岳登山道での死亡事故も発生しています。

まとめると、山中だけでなく市街地の店舗周辺までリスクが広がっているのが2025年の特色です。

なぜ増える?背景のメカニズム

  • 食料事情(堅果類の豊凶)
    ブナやミズナラなどドングリ類の豊凶が悪い年は、人里に下りるクマが増えます。
    環境省の出没対応マニュアルでも、「豊凶調査と大量出没の予測」を自治体が行う重要性が示されています。

  • 人里の“ごちそう”
    放置果樹(柿・栗)や残飯・生ごみ、ペット餌、未管理のコンポストが“誘因”になります。
    ひとたび人間=餌と学習されると、市街地でも反復出没が起きやすくなります。

  • 季節と時間帯
    被害は秋(9〜11月)に増加。
    活動が活発な薄明薄暮(早朝・夕方)は遭遇リスクが高まります。

遭遇前にできる「備え」(個人・地域)

  1. 最新の出没情報を確認
    自治体サイトや防災アプリ、環境省の出没・被害速報で傾向を把握。
    山林・里山・河川敷に入る日はとくにチェック。

  2. 単独行動を避ける
    複数人で行動し、背丈以上の藪に入らない。
    小さな子どもや犬は必ずリード

  3. 音を出して存在を知らせる
    会話・ラジオで十分。
    鈴は“万能”ではありませんが、見通しの悪い場所では有効です。

  4. クマ撃退スプレーの携行・訓練
    10%前後のカプサイシンを含むクマスプレーは5〜10mで効果的。
    噴射方向・風向・安全ピンの扱いを事前に練習。

  5. 誘因を断つ生活管理(地域で)
    柿の早期収穫・剪定、ゴミの密閉・収集日前出しの禁止、餌・家畜飼料の屋外放置禁止、電気柵の設置など、地域ルールを明文化。

クマに出会ったら:距離別・状況別の行動指針

大原則走って逃げない
背中を見せずゆっくり後退し、距離をつくる。写真撮影は厳禁
子グマを見ても近くに母グマがいます。

A)遠距離(50m以上):こちらに気づいていない

  • その場で静かに立ち止まり、風下へゆっくり引く
  • 進行方向を変える(迂回する)。
    痕跡(足跡・糞)が多ければ引き返す。

B)中距離(50m以内):こちらを意識している

  • 複数人ならまとまる腕を上げて体を大きく見せ、落ち着いた低い声で静かに話す
  • スプレーの安全ピンを外し構えて後退
    威嚇の大声・物音は“最後の手段”(状況を悪化させることも)。

C)接近・突進(チャージ)の兆候

  • ブタ鼻の呼気音・歯を鳴らす・踏み鳴らし威嚇
    背を向けずスプレー射程(5〜10m)に入ったら胸前から下向きに扇状噴射荷物は盾に。

D)実際に攻撃されたら

  • 顔・頭部を腕で覆い直ちにうつ伏せになって被害を最小化(ツキノワグマでは一撃後に離れる例が多い)。起き上がりは早すぎない
  • 親子グマでは母グマの攻撃性が高い。
    子グマに近寄らない、間に入らない。
  • 北海道のヒグマは体格・行動が異なる場合があるため、道内の公式手引きを事前に確認(共通原則は退避・スプレー・誘因遮断)。

山だけじゃない:里・街・店舗で起こるケース

  • 商業施設の侵入事案
    群馬・沼田市のスーパーでは営業時間中に店内侵入複数の負傷者が出ました。
    裏手の藪・河岸・果樹など「店舗の背面動線」の管理が重要。
    従業員は非常口の確認、店内退避誘導の訓練を。

  • 温泉・宿泊地
    朝夕の屋外作業が多い温泉・旅館では、ごみ置き場・生ごみ・従業員通路の管理を徹底。
    岩手の温泉周辺の事案は、“山に囲まれた施設”のリスクを示しました。

  • 秋の山菜・キノコ採り
    熊鈴・ラジオ・派手色ウェアは最低限。
    単独・早朝・薄暮・沢沿いは避け、藪への踏み込みは慎重に。
    10月の北上市ではキノコ採りの不明者の捜索現場で遺体のそばにクマがいた事案も。

「遭遇後」の初動:通報と情報共有

  • 110番または自治体へ通報(場所・時間・頭数・大きさ・行動)
  • 写真・動画は安全確保が最優先。無理な接写はしない。
  • 出没情報の地域共有(防災アプリ、掲示、回覧)でセカンド被害を防止

自治体・地域でやるべきこと

  1. 誘因管理のルール化(果樹の一斉収穫、空き家の果樹対応、ゴミ収集ルール)
  2. 見通し管理(通学路・店舗背面の藪刈り、河畔のヤブ管理)
  3. 学校・観光の避難訓練(「屋内退避→一時閉店・休園」の基準)
  4. 電気柵・箱わな等の配備と講習(補助制度の周知)
  5. 出没予測の仕組み(堅果類の豊凶調査×目撃通報の地図化)

おわりに——“山の問題”から“まちの安全管理”へ

2025年の出没は、山奥の話にとどまりません。
店舗・観光・通学まで包含する生活安全のテーマになりました。

大切なのは、正しい行動の準備(音・距離・スプレー・退避)と、誘因をつくらない地域運営です。
数字(被害件数)を追うだけでなく、店舗裏の藪や放置柿、ごみの出し方といった足元の“作法”を見直すことが、もっとも確実な再発防止策になります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました