カリフォルニア州サンタクルーズの名所・スチーマーレーンで、ラッコがサーファーのボードを占拠する騒動が再び起きました。
今回の当事者は大学生の女性サーファー。
夕方の入水中に足を軽く噛まれた後、ボードに乗り移られ約20分間「返してくれなかった」と証言しています。
救助隊が出動し、本人は負傷なし。
ボードも回収され、海難には至りませんでした。
現場を管轄する消防・ライフガードは、同様の事案が相次ぐため注意喚起を強化しています。
何が起きたのか
報道によれば、女性サーファーは10月14~15日ごろ、スチーマーレーン沖で足に「ニップ(軽い噛みつき)」を感じ、振り返るとラッコがボード上に陣取っていたとのこと。
岸から救助隊が出動し、ハーバーパトロールと連携してボードを取り返すまで、動物は執拗に上にとどまりました。
人への重大な外傷は確認されていません。
この騒動は地元テレビや全国メディアでも映像付きで報じられ、ビーチでは「攻撃的なラッコ注意」の看板が掲示されました。
「841」再来か?——正体は未確定
サンタクルーズでは2023年に“Otter 841”と呼ばれるメスのラッコがサーフボードやカヤックを立て続けに占拠し、当局の捕獲試行を巧みに回避して話題となりました。
2024年春には生存確認も報じられています。
今回の個体が841本人かは不明ですが、行動様式の類似から“再来”を疑う声が上がっています(841は追跡タグの不具合で識別が難しい)。
いずれにせよ、「ボードに乗り上げて長時間占拠する」という稀な行動が、再び海辺の安全・マナー議論を呼び戻した格好です。
なぜラッコはボードに乗るのか:行動生態の読み方
専門家や当局は、
(1) テリトリー/資源防衛
(2) 学習・馴化(人や道具に慣れる)
(3) 母性期のホルモン変化
(4) 人による餌やりの悪影響
など、複数要因を挙げます。
人間の行動(餌やり・至近接近)が強化子となり、“近づけばボードは安全な休息場所”と学習してしまうと、同様の行動が反復・汎化しやすい。
カリフォルニア州当局も「原因は特定困難だが、雌の攻撃性はホルモンや人の給餌と関連する可能性」と注意を促してきました。
法制度のフレーム:守るべき距離とハラスメントの定義
南部ラッコ(カリフォルニアラッコ)は連邦の絶滅危惧種法(ESA)および海洋哺乳類保護法(MMPA)、州法による保護対象。
人の接近で野生動物の行動を乱す行為は「ハラスメント(嫌がらせ)」と見なされることがあり、接近・挑発・餌やりは違法になり得ます。
米魚類野生生物局(FWS)やNOAAは「おおむね18メートル(60フィート)以上」の距離確保を推奨し、行動が変わった時点で距離が近すぎるサインだと説明しています。
つまり「可愛いから近づく」は論外。
写真目的の接近も、野生動物の学習・攻撃性を助長し、人にも動物にも長期的な負荷を残します。
安全と共存の実務:海に入る側の「型」
現地消防・ライフガードは、遭遇時の具体策として「手を叩く・水を叩く・進路を譲りつつ岸へ移動」「パドルやリーシュで距離を保ち退避」など“刺激を最小にして離れる”行動を推奨しています。
「追い払う」ではなく「関わらず離れる」が原則です。
サーファー/SUP/カヤッカーは、休息中のラッコ群れに正面から近寄らず、平行に静かに通過しましょう。
接触・写真目的の接近・餌やりは厳禁です。
【現場の心構え】
- 距離:
目安60フィート(約18m)以上。
動物がこちらを意識したらさらに後退。 - 動線:
正面接近や囲い込みはNG。
平行に通過し、滞在しない。 - 装備:
リーシュは退避の補助に。
水面で大声や威嚇行動は避ける(必要な最小限の音で)。 - 通報:
異常接近・接触・負傷があれば海保・ライフガード・野生生物当局に報告。
給餌・挑発の目撃も通報対象です。
なぜ保護が必要か:ラッコと海の生態系
ラッコはウニを食べる上位捕食者で、ケルプの森を守る要とされます。
19世紀の毛皮狩りで壊滅的打撃を受けた後、法的保護を経てゆっくり回復してきましたが、個体群は依然脆弱。
人との“近すぎる接触”が常態化すると、ストレス・負傷・事故だけでなく、問題行動による強制排除(捕獲・移送)のリスクも高まります。
「近寄らない」こと自体が保護に直結します。
メディアの盛り上がりと現場のリアル
SNSで「かわいい泥棒」という軽い見出しが拡散される一方、現場は救助・退避・ゾーニングなど地味で手間のかかる運用を重ねています。
看板の設置や一時立入自粛は、人命と動物の双方を守る最低限のガバナンス。
映える動画の拡散は、行動模倣を誘発しかねません。
地元局の警告や当局ガイドにリンクし、「離れることが正解」というメッセージを一緒に広めることが、コミュニティの安全文化を支えます。
今回の教訓:かわいさと安全の線引きを更新する
- 事実:
サンタクルーズで再びボード占拠事案。
20分前後の占拠・人の負傷なし・救助介入。注意喚起が強化された。 - 背景:
“841”の再来かは未確定だが、過去の連続事案と酷似。
識別の困難さもあり、当局は広く警戒。 - 対処:
60フィートの距離・正面接近禁止・給餌厳禁・異常時は通報。
法は「行動を乱す接近」もハラスメントと見做しうる。 - 共存:
映える接近は“負の学習”を生む。
「近づかないことこそ優しさ」という規範を共有する。
海は私たちの遊び場であり、彼女(あるいは彼ら)の生活圏でもあります。
“かわいい”と“危ない”の境界を、ルールと距離で守ること。
その一線を守れたとき、ラッコもサーファーも、同じ波の上で安心して過ごせるはずです。



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