「猫の養育費を10年」——イスタンブールの離婚合意が映す「ペットは家族」時代の新常識

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トルコ・イスタンブールの夫婦が離婚協議で、2匹の猫の飼育費として“3カ月ごとに1万リラ(約240ドル)を最長10年支払う”と取り決め——いわば“猫の養育費(cat alimony)”が合意されました。
References:Oddity Central

支払い額はトルコ統計庁(TÜİK)の消費者物価指数に連動して毎年改定

猫の監護(custody)は妻側に、夫は費用負担を担う内容です。

現地紙やニュースサイトが相次いで報じ、ペットをめぐる離婚実務の“新たな前例”になるのではと注目を集めています。

何が起きたのか

  • 当事者
    イスタンブール在住のブーラ氏とエズギ氏。
    協議離婚で慰謝料や配偶者扶養は基本的に相互請求なし
    ただし猫に関する特約を明記。

  • “猫の養育費”
    3カ月ごとに1万トルコリラを最長10年(あるいは猫の死亡まで)支払う。
    CPI連動で年1回改定。

  • 監護
    2匹は妻側に残す——“親権/監護”に相当する概念をペットへ準用した。

55万リラの慰謝料に触れるメディアもあり、金銭合意の全体像は媒体で差があります。

法的文脈:トルコでは動産でも、運用は変わりつつある

トルコ民法の原則ではペットは動産(movable property)として扱われます。

ただし近年は動物保護法の趣旨を踏まえ、当事者合意に基づく“監護”や費用分担の取り決めを裁判所が和解・和議の一部として認める例が出てきました。

今回の合意は、実務上の到達点を可視化したものと言えます。

世界の潮流:「持ち物」から「配慮の対象」へ

  • 米国
    アラスカ州は2017年、全米で初めて離婚時に“ペットの福祉(well-being)”を考慮する法律を施行。
    “共同監護”“ペットへの金銭的配慮”も命じ得る設計に改正しました。
    続いてカリフォルニア州(2019年)は“ペットの最善の利益”を考慮し、単独/共同の占有(custody)を柔軟に判断可能に。
    ニューヨーク州(2021年)も“best interests of the animal”を明文化しています。

  • スペイン
    2022年に民法を改正し、動物は“感覚ある存在(sentient beings)”と位置づけ。
    「物」から切り離し、離別時の取り扱いに福祉の観点を導入しました。

かつては「希少判決」だったペットの監護・費用分担が、各国の立法・実務で標準化へ向かっています。

経済設計の工夫:CPI連動の意味

今回の合意で特徴的なのは、支払い額をインフレに連動させた点です。

インフレ率の高いトルコでは、固定額のままでは実質価値が目減りし、フード・獣医療費が賄えなくなる懸念があるため、TÜİKのCPIで年次改定としたのはペットの生活水準を守る実務設計と解釈できます。

報道でも“CPI連動”が条項に明記と伝えられています。

実務に落とすなら:合意書に盛り込みたい5点

  1. 監護者と“面会”ルール
    住所変更時の連絡、旅行・入院時の代理世話、面会の頻度・方法。

  2. 費用の範囲
    フード、トイレ用品、ワクチン、検診、救急、慢性疾患の薬などを具体列挙。

  3. 改定ロジック
    CPI連動や上限・下限、見直し時期。
    支払い通貨・方法(銀行振込等)も固定。

  4. 意思決定
    大手術・安楽死の判断軸、セカンドオピニオン、緊急時の連絡体制。

  5. 紛争解決
    調停→家事裁判の順、違反時の遅延損害金/執行。

今回のトルコ事案は2・3が特に明確で、“費用の範囲+物価連動”を条文化した好例といえます。

メディアが前例性を強調する理由

この合意は、「動産=単純分配」という従来型の思考を超え、“生活者としてのペット”を前提に費用と監護を分離した点に新味があります。

3カ月ごとに定額支払いという定期給付は、子の養育費に似た運用で、“ペット版ガーディアンシップ”を社会が受け入れ始めた徴候とも受け取れます。

地域メディアは“新タイプの扶養/アルモニー”として位置づけ、今後の離婚実務への波及を指摘しています。

注意したい数字のブレ

本件は一次報道(フリガイエ・ヒュリエット等)を起点に多言語で拡散し、「毎月1万リラ」vs「3カ月ごと1万リラ」といった表現差が見られます。

原文では“3カ月ごと(quarterly)に1万リラ”が有力で、CPI連動・最長10年の骨格は各媒体で一致しています。

情報の参照時は出典と日付を併せて確認しましょう。

私たちへの示唆:家族の定義を書面に落とす

  • 同居の始めにペット条項(誰が主たる世話をし、費用をどう分担するか/別居時の取り決め)をメモレベルでも文書化する。

  • 長期費用(慢性疾患、シニア期ケア、保険料)を固定額×改定式で見える化。
    共働き・転勤などライフイベントに応じて年1回棚卸しを。

  • “福祉の観点”を明文化(環境の変化に弱い個体、他の動物・子と同居可否、運動量の確保など)。

こうした“生活設計としての合意”が、万一の別離でもペットのQOLを守る最善策になります。
今回のトルコの合意は、その分かりやすい雛形です。

まとめ

  • イスタンブールの離婚合意で、猫2匹の費用として“3カ月ごとに1万リラ、最長10年、CPI連動”が取り決められた。
    監護は妻、費用は夫という役割分担型。

  • トルコ法では動産扱いが原則だが、合意と福祉の視点を織り込む実務が浸透。
    米・西欧でも“ペットの最善利益”を考慮する潮流が拡大中。

  • インフレ連動は、実質的なケアの維持に不可欠。
    数字の表現差に注意しつつ、生活者としてのペットを前提に監護・費用・改定式を書面化することが、これからの“家族設計”のスタンダードになっていくでしょう。

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