10月20日、自民党と日本維新の会が連立樹立で合意。
これに先立つ10月10日には、公明党が1999年から続いた自公連立の解消を表明しました。
長年“票と議席の設計”を支えてきた公明の組織票が離れ、代わりに維新の都市型・関西基盤が中核パートナーになる――その瞬間、小選挙区と比例代表の最適解は大きく書き換わります。
本稿では、過去の得票・議席データと近年の選挙結果を手がかりに、次の国政選挙で起き得る変化を具体的に展望します。
まず事実関係:なぜ「自公」から「自維」へ
公明は連立離脱を表明し、同党の母体・創価学会による組織動員が自民候補の小選挙区当選を支えてきたことは学術・政策解説で繰り返し指摘されてきました。
「与党は重複擁立を避け、互いの票を融通する」という自公の運用が、小選挙区での勝率を押し上げてきたわけです。
他方で、維新は関西で圧倒的に強い第3党。
2021年総選挙では大阪を中心に躍進し、比例近畿で第一党。
全国の比例得票でも維新805万票(14.0%)/公明711万票(12.4%)と、都市部を中心に自民・立憲の“間”をすくう勢力として定着しました。
2024年総選挙では自公が過半数割れ。
以降の参院選でも与党は少数化し、自公体制の求心力が下がる中で「自維」接近が現実化した、というのが大きな流れです。
公明の強みが抜ける穴:小選挙区で何が起きるか
組織票の規模感
公明の比例票は概ね600~700万票台で安定推移(例:2021年比例711万票・12.4%)。
この“硬い票”が、小選挙区での上乗せ(推薦・支援)として効いてきました。
とりわけ都市部の接戦区で数千~数万票の差をひっくり返す“ラストワンマイル”の力学です。
接戦区の脆弱化
2024年の小選挙区結果をみると、得票差5%未満の接戦が首都圏・東海を中心に多数。
こうした“薄氷区”は、公明の推薦・動員が消えるだけで自民が劣勢化しやすい。
実際、東京・神奈川・埼玉・千葉・愛知では、前回小差でひっくり返った区が多く、動員の空白は即座に落選リスクへつながります。
要するに、公明不在の小選挙区は首都圏・東海で痛手。
「自維」連立だけでは、この穴を自動的に埋められないというのが出発点です。
維新の強みがハマる地帯:関西で何が起きるか
維新は近畿で強い。
2021年総選挙では大阪で地滑り的勝利、近畿比例でも第一党。
つまり“地元・近畿では維新が集票機関”であり、自民は相乗効果を得やすい(候補調整・推薦の設計次第)。
逆に近畿以外では維新はまだ薄い県も多いため、全国で均一に“公明の代替”にはならないのが実情です。
- 相乗効果シナリオ:
大阪・兵庫・奈良・和歌山で自民が小選挙区を譲る/維新が取る、代わりに近畿外の一部区で維新が候補抑制→自民を支援。
これなら近畿の議席純増+他地域の取りこぼし抑制が見込める。 - カニバリ(食い合い)シナリオ:
両党が都市部で棲み分け不十分→保守票分散→野党第一党が漁夫の利。
自公時代の“重複回避”がなくなると、このリスクは常に残ります。
維新の得票は“地域偏在”。
関西で強烈な加点、首都圏・東海の穴埋めは限定的。
ここを読み違えると、全国純増どころか純減もあり得ます。
比例での再配分:票はどちらへ流れるか
比例は政党別の総力戦。
自公→自維で保守票の“社内流動”が起きやすく、自民の比例票が維新にスライドする余地があります。
2021年の比例で自民34.7%、維新14.0%、公明12.4%。
近畿ブロックでは維新33.9%で首位。
自維連立が定着すると、近畿比例は維新が議席を上積み、自民は近畿比例で目減りの可能性。
一方で首都圏比例では公明の固定票が抜けるため、自民の比例取りこぼしも懸念されます。
総じて比例の“トレード”は自民にやや不利、小選挙区の調整で取り返せるかが勝負です。
3つの現実的シナリオ(次の衆院選を想定)
関西集中・全国限定相互推薦(勝ち筋最大化)
- 維新主導で近畿の小選挙区を面で攻略、自民は譲る代わりに近畿外の接戦区で維新に候補抑制・推薦を取り付ける。
- 効果:
近畿で維新+比例上積み、首都圏・東海の小選挙区接戦で“分散”を回避。 - リスク:
維新の“反自民”イメージが薄まる副作用(無党派離反)。
緩い協力(棲み分け不十分)(リスク顕在化)
- 両党が都市部で重複→保守票が分散、立憲・国民など最大野党が小選挙区を拾う。
- 2024年実績でも小差の接戦区が多数。
この形になると自民は首都圏で連敗、維新も近畿外で伸び悩み。
公明の野党連携が進む(自民に最悪)
- 公明が首都圏・東海の接戦区で野党候補を事実上“後押し”。
(露骨な相互推薦はなくとも動員の向きが変わる) - 効果:
自民の薄氷区が一斉に崩れる。
比例でも公明の組織票が自党へ回帰し、自民の比例得票を侵食。 - 参院選でも改選1人区での野党側一本化+公明支援流入が成立すると、与党系は連敗リスク。
エリア別の変動期待値
- 首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉):
自公の重複回避+公明動員が消えるため自民は総じて不利。
維新の“上積み”は現状小さく、候補調整が生命線。 - 東海(愛知など):
都市型の接戦が多く、公明の離脱ダメージが直撃。
維新の裾野は拡大傾向も即戦力には限定的。 - 近畿(大阪・兵庫・奈良・和歌山・滋賀・京都):
維新がエンジン。面での候補調整ができれば議席純増の主戦場。
比例でも維新の取り込みが効く。 - 北海道・東北:
無党派比率高+野党強含み。
公明離脱で自民の守りが薄く、立憲の奪還余地が広い。 - 九州:
伝統的に自民が強いが、都市部(福岡など)では接戦化。
候補重複は避けたい。
何をすれば勝率が上がるか(自維側の実務)
- 小選挙区の“重複ゼロ原則”を復活:
自公時代の要諦は重複回避。
自維でも徹底し、区ごとに“どちらが勝てるか”をデータで割り振る。 - 比例の“ブロック間最適化”:
近畿比例は維新に寄せ、首都圏比例は自民の取りこぼし抑止。
メッセージ分担で同床異夢を避ける。 - 首都圏・東海の“代替動員”設計:
公明の動員空白を業界団体・地域保守ネットワークで補填。
期日前投票の地上戦KPI(投票依頼到達率・期日前比率)を毎週公開で回す。 - 野党の一本化阻止:
立憲・国民・共産・地域新党の候補調整を寸断。
争点設定で“政策差”を際立たせ、政策連合の印象を悪化させる。 - 参院1人区テコ入れ:
統一地方選や首長選での共闘布石→次回参院の地縁固め。
1人区の重複回避を優先順位の上に。
逆に、自民にとって赤信号は何か
- (赤)首都圏の小選挙区で重複出馬:分散→野党勝利の典型パターン。
- (赤)公明が“静かに”野党支援:
露骨な相互推薦がなくても実動員の背中押しで接戦は動く。 - (赤)比例で“保守内スライド”が加速:
自民→維新への票移動が過剰だと自民の比例議席が目減り。
まとめ:鍵は「自公時代の最適化」を自維流に再設計できるか
- 公明の強み=硬い動員が抜け、維新の強み=関西の波動が入る。
- 全国均一の代替にはならないため、小選挙区の棲み分け設計と比例のブロック最適化が勝敗を分ける。
- 首都圏・東海の接戦区リスクをどれだけ下げられるか。
ここを誤ると、近畿の上積みを相殺して余りある。
選挙制度は小選挙区+比例代表の並立。
連立相手の“特性地図”に合わせた再最適化こそが、「自維」体制の生死を決める技術です。
重複ゼロと地域別KPI――この二つを掲げた陣形づくりが、次の国政選挙での最大の防御であり唯一の攻撃になるはずです。



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