日本維新の会の藤田文武・共同代表(衆院大阪12区)をめぐり、公設第1秘書が代表を務める会社に、2017年6月~2024年11月の間に約2,100万円が発注され、その約94%が政党交付金などの公金だったとする報道が浮上した。
藤田氏は11月2日の動画で「適法な取引」としつつ当該会社への発注中止を表明し、4日には党の吉村洋文代表が「秘書や本人が代表の会社への公金支出を禁止する内規変更」を指示。
問題は「違法か否か」だけでなく、利益相反の疑念を生まない設計(外形的公正)に移っている。
何が疑問視されているのか
発端は「しんぶん赤旗」日曜版(11月2日号)のスクープ。
兵庫県の株式会社リ・コネクト(代表:藤田氏の公設第1秘書)に対し、ビラ印刷などで約2,100万円を支出。
秘書は年720万円の報酬を同社から受けていたと報じられた。
政治資金収支報告書・使途報告書・選挙費用収支報告書の突き合わせに基づくとし、「税金の還流」と表現している。
ここでの論点は、実体取引か否かだけではなく、発注先の選定が“身内優遇”に見えないかという外形である。
藤田氏の対応:法はクリア、しかし発注は止める
藤田氏は11月2日に動画で、「弁護士にも相談のうえ適法」と主張しつつ、今後は当該会社への発注をやめると説明。
2日後の4日には、維新の吉村代表が「3親等内の親族に加え、秘書や本人が代表の会社も禁止」へと内規変更を打ち出した。
つまり、違法性は否定しながらも、疑念を生みにくい体制に改める現実的着地を図っている。
法制度の基礎知識:公設秘書の兼職は「原則禁止・例外あり」
国会議員秘書給与法は、公設秘書の兼職を原則禁止としつつ、議員が支障なしと認めた場合に「兼職届」を議長に提出すれば例外を認めている。
今回の報道では、公設第1秘書の兼職届(2024年11月19日付)の存在や報酬額の記載にも触れており、「法の建付け上は許容」の余地がある。
ただし、透明性の不足や利益相反管理の甘さは、たとえ合法でも政治的説明責任の対象になる。
タイムライン整理
- 10/31~11/2:
「赤旗」日曜版が約2,100万円支出や年720万円報酬などを報道。SNSで拡散。 - 11/2:
藤田氏が動画で釈明、「適法」「今後は発注中止」を表明。 - 11/4:
吉村代表が内規変更を指示(秘書・本人が代表の会社も公金支出禁止へ)。
藤田氏は会見で説明の方針。
もう一つの火種:「記者の名刺」公開問題
疑惑報道への反論過程で、藤田氏が取材記者の名刺画像をXに掲載したとして批判が拡大。
赤旗側は削除を申し入れたと報じられ、報道機関や有識者から取材妨害・萎縮効果を懸念する声が上がった。
金銭の透明性に加え、言論への向き合い方も注視点になっている。
争点の核心:違法性→「外形的公正」へ
今回、藤田氏は違法性を否定し、発注中止と今後の改善を示した。
一方で、政党交付金や調査研究広報滞在費など公的原資が絡む支出では、価格・随意性・選定プロセスに疑義が生じにくい形(第三者性・競争性・開示性)を担保しなければならない。
“合法でも納得感がない”という段差が、政治不信の温床になるからだ。
吉村代表の内規変更は、その段差を埋める組織ガバナンスの応答と言える。
具体的に何が問われるか
- 選定プロセスの開示:
発注先の比較検討、仕様書、見積取得、価格妥当性評価(第三者確認)の有無。 - 関係性の可視化:
役員・実質支配者と議員・秘書の利害関係、兼職届の内容・更新履歴。 - 会計の粒度:
品目・数量・単価・支払方法、市場価格との乖離。 - 第三者監査:
政党内部監査だけでなく、外部の独立監査や透明化パッケージ(帳票・見積・契約・納品の突合)。 - 情報公開の仕組み:
住民・記者が一次資料にアクセスできる導線(黒塗り最小化、標準フォーマット公開)。
これらが整えば、「身内優遇では」という疑念は大幅に下がる。
逆に“説明は十分”と言いながら一次資料が確認できない状態は、政治的コストを積み増す。
維新の「身を切る改革」と整合するか
維新は公金の私物化に厳格という自己イメージで支持を得てきた。
今回、秘書・本人が代表の会社を禁止対象に広げる内規変更は、看板政策と整合しやすい。
問題は適用の徹底と遡及的な検証だ。
価格の相対評価や随意契約の例外範囲など、実務細則まで落とすことが信頼回復の鍵となる。
今後の焦点
- 会見と資料開示:
藤田氏が一次資料(見積・契約・納品・入金)をどこまで公開するか。 - 党内規の運用:
例外規定の有無、既存契約の見直し、第三者チェックの導入。 - 取材環境の保全:
「名刺公開」問題への明確な見解と再発防止。 - 制度的課題:
兼職届の実効性と公開性をどう高めるか(議会側の情報公開ルール見直し)。
まとめ
本件は、違法・適法の次元を超え、外形的公正と説明可能性をどこまで設計できるか、という政治ガバナンスのテストだ。
藤田氏の発注中止、吉村代表の内規強化は第一歩にすぎない。
選定プロセスの透明化、第三者監査、一次資料の公開を“標準装備”にできるか。
さらに、取材・批判への向き合い方も同じ土俵で問われる。信頼は一挙に取り戻せない。
だが、疑念が生まれにくい仕組みを一つずつ積むことが、政治とカネの古傷を癒やす唯一の道だ。



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