10月27〜29日に米国のトランプ大統領が来日し、28日に高市早苗首相と初の対面会談に臨みます。
就任直後の電話協議では「日米同盟の一層の強化」を確認済み。
では、実際の首脳会談では何が話し合われるのか——公開情報と直近の政策動向から、あり得る論点と着地シナリオを整理します。
1) 会談の基本線:同盟の再確認+取引の具体化
第一の軸は、同盟の再確認と具体的な取引のパッケージ化です。
高市政権は防衛力整備を加速し、防衛費GDP比2%の前倒し達成へ踏み込みました。
これはトランプ政権が重視する同盟国の負担増に呼応するサインで、首脳会談では抑止態勢の強化(対中・対北)と役割分担の明文化が進む蓋然性が高いでしょう。
2) 安全保障:抑止態勢の再設計
- 対北朝鮮:
今月も弾道・極超音速の発射が続き、北は露との軍事連携強化も公言。
日米は探知・追尾・迎撃の3層での連携強化、無人機・極超音速対処、弾薬共同生産など具体の能力協力に踏み込む公算です。 - 対中国・尖閣:
日米安保第5条の適用確認は既定路線。
加えて有事前段の「グレーゾーン」対応(海警・民兵対処)や島嶼防衛の訓練恒常化が議題に上がるはずです。 - 負担分担:
トランプ政権は同盟のコストと通商を連動させる発想が鮮明。
在日米軍のホストネーション・サポートの上積み要請が出る可能性は小さくありません。
3) 経済・通商:関税と見返り投資の再編
2025年春から米国は全輸入に一律10%のベース関税を敷き、個別国・品目により高率の相互関税を課す新体制へ移行。
日本は自動車15%までの引下げ合意を取り付けた一方、他品目も含め平均負担は大きいのが現実です。
首脳会談では、①追加の関税減免、②日本側の投資・購入コミット(米国製ピックアップや農産物等)の抱き合わせが焦点になり得ます。
前政権期に合意した対米投資パッケージの継承・上積みも交渉材料でしょう。
4) 技術・経済安保:AI・半導体・核融合の包括協力
日米は今回、AIや核融合など先端領域の協力覚書(MOU)を結ぶ見通しと報じられています。
半導体・量子・通信・宇宙のサプライチェーンの冗長化、対中輸出管理・投資審査の足並み調整、生成AIの信頼性・安全性の国際基準づくりまで、経済安保の総合設計が俎上に載るはずです。
高市政権の原子力回帰・次世代炉/核融合推進とも利害が一致します。
5) 東アジア情勢:台湾海峡とAPEC前の力学
今回の会談は、APEC直前かつ米中首脳会談の前哨戦の位置づけも持ちます。
日本としては、台湾海峡の平和と安定、サイバー・宇宙領域のルール形成で米国の関与を確約させつつ、対中デリスキングがデカップリングに暴発しない線引きを探る局面です。
6) 為替・マクロ:円安とインフレの副作用管理
円は直近まで下落基調。
米財務省は日本を監視リストに置きつつ、過度な変動抑制のための介入は容認する立て付けです。
トランプ政権の関税は米物価上振れを通じてドル高圧力を強めかねず、日本側は為替の安定と関税の負担軽減をパッケージ交渉で求める合理性があります。
7) 首脳の個性:スピード重視のディールと国内政治
トランプ流は目に見える数値目標と即時成果を好みます。
高市首相は安全保障や原子力で踏み込みつつも、国会基盤は盤石ではないと指摘される中、予算・法整備に耐える合意へ落とす必要がある。
「防衛×通商×投資」の複合パッケージで成果を示す一方、国会審議・財源手当を冷静に段取りできるかが勝負どころです。
想定シナリオ
包括パッケージで大枠合意
- 防衛:
共同声明に対北抑止の具体協力(無人機対処・弾薬生産・島嶼訓練)を明記。 - 通商:
自動車以外の一部品目で関税減免・適用猶予を拡大し、日本は対米投資・調達の上積みで対応。 - 技術:
AI・核融合MOU署名、半導体・量子の官民基金連携を立ち上げ。
安全保障は前進、通商は継続協議
- 防衛は進展するが、関税は大筋維持。
日本は予備的な投資表明と次回協議の工程表で時間を稼ぎ、為替に過度な政治圧力を持ち込まない線を確保。
通商で難航、共同声明は抽象化
- 関税・投資の規模感で折り合わず、抽象的文言に後退。
市場は円安・株安で反応、外務・通商の実務ラインで再交渉へ。
交渉の肝——数字と工程をどう束ねるか
- 数字:
防衛装備の共同生産数量、投資金額・期中実行率、MOU→協定への移管期限など、測れるKPIで束ねる。 - 工程:
年内の閣議決定・補正、翌年度税制・法改正、3年の中間レビューまで時間軸で並べる。 - メッセージ:
「関税の痛み」→「対米投資・技術提携の果実」へ物語を転換し、家計・企業に向け可視的メリット(雇用・価格)を示す。
まとめ:取引の質が同盟の強さを決める
明日の首脳会談は、地政学の緊張(北朝鮮・中国)と通商の緊縮(関税)という二つの圧力を、技術協力と投資で橋渡しできるかの試金石です。
防衛の実効性を高めるほど、通商の痛みを和らげる政治資本が要る。
AI・核融合・半導体のMOU、自動車関税の扱い、在日米軍の負担分担——これらを一枚の設計図にまとめられるなら、日米は“取引依存”を越えた戦略的同盟へともう一段階進むはずです。



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