中国メディア36Krは、「“世界にAIとの話し方を教えた”ライリー・グッドサイドがGoogle DeepMindに正式合流」したと報じました。
References:36Kr
CEOデミス・ハサビスやプロダクト責任者のロガン・キルパトリックが歓迎の投稿を行い、“初のスタッフ・プロンプトエンジニア”として迎え入れられたことが確認できます。
記事は、彼がプロンプトエンジニアという新職能を世に広めた経緯とともに、「文脈設計(context engineering)」と「指示プログラミング」という二本柱の考え方、そしてプロンプトが最終的に“モデルの機能”へ吸収されていくダイナミクスを紹介しています。
報道の要点
- DeepMind入りを本人・関係者が発信:
36Krはグッドサイドの合流を伝え、ハサビスらの歓迎投稿にも触れています。
ロガン・キルパトリックは「AI Studioチームの初代スタッフ・プロンプトエンジニアとして迎える」と明言。
本人Xプロフィールでも「@GoogleDeepMind」表記が確認できます。 - “プロンプトエンジニアは消える”論への反証:
登場初期は「バグを突く一過性の職」との懐疑もあったが、3年経った今も役割はむしろ拡大。
設計知の体系化と製品への実装が進んだ、と記事は位置づけます。 - 代表的成果:
- “Ignore all previous instructions …” など挙動を制御する誘導法の普及。
- “glitch token”(例:「␠davidjl」)の観察からトークナイザー由来の振る舞いを可視化。
- 「You are a GPT-3 model」という長尺・多段プロンプトで外部実行系と往復させる工夫。
いずれも“モデルの癖”を知り尽くした実験と共有が土台にあります。
深掘り①:プロンプトは仕様書から機能へ吸収される
グッドサイドは、良いプロンプトは最終的にモデルの標準機能へ統合されると語ります。
初期は、presence/frequency penaltyや余分なスペースにまで目配りする“手作業”が不可欠でしたが、ChatGPTの登場以降は難度が下がり、良い作法(few-shot、出力フォーマット指定、思考の分割)がシステム側に取り込まれてきた。
すなわち「設計知→UI/推論制御→標準機能」という知の吸収サイクルが回っている、という見取り図です。
この視点は、“プロンプトは一時的な裏ワザ”という通俗的理解を改めます。
探索→抽象化→実装という製品開発の正道としてのプロンプトエンジニアリング。
役割は“魔法”ではなく、ユーザー要求とモデル特性の翻訳だと再定義できます。
深掘り②:「文脈設計」と「指示プログラミング」
記事はプロンプトエンジニアリングを二層に分けます。
- 文脈設計(Context Engineering):
何を、どの順で、どの粒度で見せるか。
RAG(検索拡張生成)やツール実行、スキーマ化した知識の提示など、入力の“構え”を設計する層。 - 指示プログラミング(Prompt Programming):
依頼の分解、役割定義、制約条件、出力仕様を誤解なくコード化する層。
ニュース要約や検索連動のLLMでは両輪が決定的で、後者だけが可視化されやすい(ゆえにコピーされやすい)と注意喚起しています。
深掘り③:現場で効く実装パターン
- 構造化出力の強制:
JSON/CSV/表を厳格スキーマで要求し、“自由作文”を禁じる。
検証器で必須フィールド欠落を自動弾き。 - 自己チェック・二段階法:
第1パスで結論、第2パスで“根拠の欠落・矛盾”の検査。
温度やモデルを変えて合意度を見る。 - コンテキストの“節度”:
長文は要約→分割→順送り。
トークン圧縮と要点タグで取り違えを抑制。 - “危険語彙”の隔離:
プロンプトインジェクション対策として、ユーザ入力→中間表現→最終指示を分離し、禁止命令を検証ルールでブロック。 - 再現性:
プロンプトのバージョン管理(差分・メタデータ・指標)とA/B評価で運用知を資産化。
これらは“設計知の製品化”に向けた組織の型であり、個人技→チーム知への橋渡しです。(参考:グッドサイドの講演・対談群)
今回の何が事件なのか:企業AIの重心移動
一流モデルの提供元(DeepMind)に一流のプロンプト設計者が入る、ということは、モデル開発と“ヒトの言語”の設計が密結合していくサインです。
エージェント化・ツール実行・長期記憶が加速する中、UI/仕様としてのプロンプトは研究・製品・セキュリティの境界を横断します。
すなわち、
- 研究:“良い作法”の内在化(システムプロンプト/ポリシー)
- 製品:会話での実務自動化(Apps/拡張、AI Studio連携)
- セキュリティ:誘導・注入攻撃への耐性(ポリシー・ガードレール)
この三方向のハブに“プロンプトのプロ”を据える動きは、“消える職種”論を実務面から否定します。
キャリアの視点:これからのプロンプト人材に必要なこと
- 領域知×仕様化力:
金融なら規制語彙、医療なら禁忌表現…ドメインの禁則・定義をプロンプトと検証器に落とし込む力。 - 評価(Eval):
再現性ある指標化。
正答率だけでなく反実仮想の耐性、出典忠実性、コスト/レイテンシを同じ画面で見る設計。 - ガバナンス:
著作権・個人情報・安全ポリシーをシステムプロンプト/ツール権限に織り込む。 - 協働:
RAG/検索/ツール接続のエンジニアと共同の“仕様書”としてプロンプトを扱う習慣。
グッドサイドの転身が示すのは、“巧い言い回し”の職ではなく、“AI仕様の翻訳者”という本務です。
まとめ
- ライリー・グッドサイドがGoogle DeepMindへ。
関係者の投稿と本人プロフィールで裏づけ。
“初のスタッフ・プロンプトエンジニア”として合流し、プロンプト知のプロダクト内在化を加速させる布陣です。 - プロンプトは“裏ワザ”ではなく“設計知”。
文脈設計×指示プログラミングの二層を、評価・セキュリティ・ガバナンスと結合させることが競争力の源泉に。 - 企業実装の勘所は、構造化出力・自己検証・インジェクション耐性・再現性。
個人技からチームの型へ転換できる組織が、“会話がUI”の時代を制します。



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