2025年11月7日、林芳正・総務大臣が閣議後会見で、週刊文春の報道について「ポスター貼付や毀損時の貼り替え等の機械的労務に対する労賃であり、公選法上問題のない支出」と説明しました。
References:文春オンライン
これに先立ち、文春オンラインは、昨秋の衆院選後に提出された選挙運動費用収支報告書に、「ポスター監視」などの名目で労務費を支払い、一部は実態と乖離している可能性があると指摘。
地元有権者らの「監視なんて、していない」との証言を掲載しました。
記事は、虚偽記入(公選法246条)や、実態がない支払いなら違法な寄附(同199条の2)に当たり得るとの有識者コメントも紹介しています。
林氏側は「問題のない支出」との見解です。
重要:本稿は報道内容と公的情報に基づく論点整理であり、刑事・行政上の違法性の最終判断を示すものではありません。関係当事者には推定無罪が適用されます。
報道の具体点(記事から読み取れること)
- 支出名目と範囲:
選挙費用の労務費として約316万円を計上。
そのうち「ポスター監視」「維持管理」名目での支払いが多数。 - 現場証言:
受領者の複数人(取材11人中8人)が「監視・見回りはやっていない/頼まれていない」と証言。 - 法的評価(記事内の見解):
- 虚偽記入(公選法246条):
事実と異なる支出記載が故意であれば該当し得る。 - 寄附の禁止(199条の2):
実態のない金銭給付は、選挙区内の者への寄附に当たる可能性。
- 虚偽記入(公選法246条):
- 林氏側の回答:
貼付・貼り替え等の機械的労務への対価であり、公選法上問題なしとの認識を表明。
公選法のキホン
実態と記載の一致(虚偽記入)
公職選挙法246条は、選挙運動に関する収支の規制違反(虚偽記入など)に「3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」を定めます。
条文の構成上、支出の事実・内容・金額の正確な記載が前提で、故意性が問題になります。
寄附の広い定義(199条の2)
199条の2は、候補者・公職者が選挙区内の者へ寄附することを原則禁止。
寄附は「金銭・物品・その他の財産上の利益の供与や約束」を広く含みます。
実態なき金銭給付があれば寄附に該当し得るとの整理が自治体資料にも明記されています。
労務への対価はすべてNGではない
一方で、公選法は一定範囲の労務者への報酬・実費弁償を例外的に許容しており、最高額や支給対象が各告示・運用で定められています。
実在の作業に対し、相当額を支払うこと自体は直ちに違法ではありません。
争点は実態の有無と対価の妥当性です。
どこが核心か
A. 「機械的労務」の線引き
林氏側は「貼付・貼り替え等の機械的労務」への対価と説明。
一方、記事は「監視」「見回り」名目の支払いが実態と乖離している疑いを提示。
貼付・貼り替え等の作業実績が明確なら適法の余地がある一方、監視が実施されていないのに支出があれば、虚偽記入や寄附の法的評価が生じます。
鍵は作業指示、日報、写真、ルート表、連絡ログ等の客観記録です。
B. 「虚偽」成立には何が必要か
虚偽記入は故意(わざと)が要件。
受領者側の認識だけでなく、出納責任者・事務所側が実態をどう把握し、何を記録に基づいて支払い・記載したかが焦点です。
実体的な指示と検収(作業報告、位置情報付画像など)が存在すれば、認識可能性の評価が変わります。
C. 「寄附」判断の実務
自治体資料は、寄附を極めて広くとらえています。
ただし、契約(労務の対価)に基づく支払いが実在する作業に対応しているなら、寄附ではなく費用。
争点は実在性の証拠と対価の相当性(相場・時間単価・成果の検収)です。
これからの「検証ポイント」
- 証憑一式:
領収書・支払伝票・雇用/委託契約、日別の作業記録、写真・位置情報。
名目と実態の突合が第一歩。 - 受領者ヒアリングの整合:
複数人証言の時系列・役割を整理。
貼付初日だけ作業など、部分的実施の可能性も吟味。 - 事務所の内部統制:
誰が指示・検収し、記載したか。
チェックリスト/ダブルチェックの有無。 - 金額妥当性:
地域相場や告示上の上限との整合。
交通費等の実費弁償の取り扱い。 - 説明の一貫性:
会見・文書回答・質疑への応答が矛盾なく維持されるか。
編集部視点:制度の「穴」をふさぐには
- 名目の細分化をやめる:
貼付/補修/見回りなどを細かく分けて支払うと、検証可能性が落ちます。
「ポスター維持業務(貼付・補修・巡回)」として包括契約+作業内訳のログ添付が現実的。 - エビデンスの標準化:
掲示番号の写真+日時+位置情報をスマホで自動保存。
作業アプリで出納と連動し、支払時に自動照合。 - 第三者監査の導入:
提出前レビューを外部に。
虚偽記入リスクの可視化が抑止力に。 - 教育と合意形成:
受領者にも「寄附禁止」「実費弁償の範囲」を書面で周知。
トラブル時は速やかな差額返還・訂正再提出で被害を最小化。
まとめ
- 報道の骨子:
文春は、「ポスター監視」名目の支出と実態の乖離、ひいては虚偽記入(246条)や寄附(199条の2)の可能性を指摘。
受領者の複数証言を掲載。 - 当事者の見解:
林氏側は「貼付・貼り替え等の機械的労務への対価で、法的に問題なし」と説明。 - 論点の本質:
(1)実態の立証、(2)記載の正確性、(3)対価の相当性。エビデンスが最終判断を左右します。 - 読者の視点:
今回の件は個別事案であると同時に、あらゆる陣営が抱え得る統制課題でもあります。
制度の範囲内でも、証憑管理と説明責任をどう担保するかが問われています。
※本記事は2025年11月8日(JST)時点の公開情報に基づく解説です。続報や当局の判断により評価が変わる可能性があります。



コメント