「カーバイド銃」ブームが生んだ惨事——マディヤプラデーシュで相次ぐ失明と当局の対応

海外

インド中部マディヤプラデーシュ州で、ディワリ(灯明祭)直前から「カーバイド銃(carbide gun)」と呼ばれる“手作り発火器具”が若者の間で急速に拡散し、多数の眼外傷と失明が報告されています。
References:The Independent

英 The Independent は「十数人の子どもが失明、SNS主導の“必携トイ”化が悲劇を招いた」と伝えました(10月23日付)。

現地メディアはその後も被害を上積み報道しており、負傷者は数百人規模に達しています。

報道の要点

  • 被害の広がり
    The Independent は十数人の失明を伝え、州内の病院に100人超の子どもが重い眼外傷で搬送されたと報道。
    続報では負傷は300人前後、うち数十人が角膜重度損傷との推計も出ています(10月23〜25日)。

  • 何が起きたのか
    SNSや動画サイトの“作り方”投稿を真似た若者が安価な素材で発火器具を自作
    爆音や炎で遊ぶうちに破裂し、角膜熱傷・穿孔・顔面熱傷など重傷が頻発

  • 当局の対応
    州政府は販売・所持・使用の全面禁止を各地区に指示し、EC/SNSでの販売・拡散の取締を要請。
    「子ども向け玩具と誤認されやすいが実質“危険武器”」としてゼロトレランス方針を表明。

「カーバイド銃」とは何か——「農業用の音威し」がトイ化した

現地紙は、もともと農家がサルや鳥を追い払うために使う“アグリ・キャノン”が発端だと説明します。

カーバイド(炭化カルシウム)に水が触れると可燃性アセチレンが発生し、点火で爆音と衝撃が出る——この性質をPVC管や簡易容器で模倣した“手作り版”が「カーバイド銃」です。

低価格・入手容易・“映える”演出が若者に刺さり、短期間で拡散しました。

重要:本記事は危険行為を助長しないため、作製方法の詳細や具体手順には一切触れません。
各メディアも「子どもが玩具と誤解して使う」点を強く警告しています。

なぜ眼の被害が多いのか——「近距離・上向き」の最悪コンボ

眼科医の所見では、被害の多くが片眼の重傷で、角膜熱傷、角膜混濁、輪部虚血、穿孔などを伴い、視力は6/36(スネレン表記6mで読める文字が、正常視力なら36mで読める大きさ)から全盲まで幅があるとの報告。

点火時に顔を近づける/容器をのぞき込む行為、上向き姿勢での発火が至近距離の爆炎・圧波となって眼球に直撃するためです。

回復に半年以上を要する例も示されています。

SNSが加速させた誤学習と「代替花火」ニーズ

  • アルゴリズム起点の拡散
    短尺動画の“作って撃ってみた”系が模倣の連鎖を生み、撮れ高が危険行為をエスカレートさせる——これは花火や危険遊具でも繰り返し見られるパターンです。

  • 「安くて派手」な代替花火
    物価上昇や規制で花火の購入・使用場所が制限される中、低コストで大音量の“代替”を求める心理が働いた可能性。
    オンラインや露店で“ミニ大砲”“モンキー撃退器”として売られていたとの指摘も。

  • 行政の初動遅れ
    一部の警察官がディワリ前に違法販売を検挙したが、全州的な抑止には至らず。
    結果、“暗いディワリ”と評される事態になったと現地紙は批判しています。

行政・医療の現場:禁止・摘発・ケアの三層で動く

州首席秘書官は全地区での禁止命令違反販売の厳罰化EC/プラットフォームへの是正要請を指示。

政治側も病院を相次ぎ訪問し、被害者の治療と補償検討を進めると表明しました。

被害者数は報道ごとに幅があるものの、小児の重症例が多い点で一致。

角膜移植・長期フォローが必要な例も見込まれます。

化学と危険性(要点だけ)

  • 反応
    CaC₂+H₂O → C₂H₂(アセチレン)+ Ca(OH)₂
    アセチレンは低エネルギーで着火し、閉鎖空間では爆轟的挙動を取り得る。

  • 容器破裂
    PVC/プラ容器は耐圧・耐熱に乏しいため、不均一に破断鋭い破片となる。
    眼・顔面に直撃しやすい。

  • 残留熱・化学傷害
    発火後も高温ガスとアルカリ性残渣が残り、熱+化学的損傷が同時進行し治癒遅延を招く。


※ここでも具体的な作動条件や量は書きません(悪用防止のため)。

予防と被害最小化の実務

  1. 即時禁止と見せしめ摘発
    露店・EC・SNSの3面封じ込め。
    ハッシュタグ監視/通報窓口の常設を。

  2. 学校・地域での“逆バズ”
    眼科医・救急医の実例写真(加工済)と回復に要する期間を示す短編教材で抑止

  3. 親と子の合意
    「覗かない・向けない・触れない」の“三ない”ルール。
    危険動画のミュート・非表示設定の手順も共有。

  4. 応急対応の原則
    眼の外傷はこすらない/洗眼は清潔水で軽く/眼帯で遮光/直ちに眼科へ
    自己判断で点眼しない

  5. データ連携
    病院に傷病データの集中登録を要請し、年齢・発生場所・媒体(SNS/露店/EC)を紐づけて対策をエビデンス化。

何が構造問題なのか

  • プラットフォーム責任
    危険行為の作製・使用動画収益化停止/年齢制限/検索抑制はすでに多くの規約にあるが、実装と運用の穴が露呈。
    通報〜削除のSLA明確化が急務。

  • 製品・流通のグレー
    「猿よけ」「ミニキャノン」等の名称で玩具に偽装された商品がオンラインで流通。
    販売者の本人確認・危険品目リスト強制適用が必要です。

  • 祭礼文化と安全
    ディワリや正月など“音と光”の文化は尊い。
    一方で代替花火・安全演出の提供を公的に後押ししない限り、“安くて派手”の無規制サイドに需要が流れやすい。

まとめ

  • The Independent の報道が指摘した通り、SNS発の“新トレンド”が一気に実害化した。
    十数人の失明に加え、負傷者は300人規模とする続報も(10/23〜25)。
    小児中心の眼外傷という深刻なアウトカムが並ぶ。

  • 州は全面禁止・摘発強化を打ち出したが、警鐘を先取りした現場の兆候を全州対策につなげ切れなかった。
    露店・EC・SNSの三面封じを平時から制度化すべきだ。

  • 親子・学校・医療・行政・プラットフォームが一体で動く“逆バズ”が必要。
    ディワリを安全に祝う代替の楽しみを公的に“見える形”で提供し、危険行為の模倣ループを断ちたい。

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