英 The Register が報じた新手のAndroidマルウェア「Herodotus」は、キーボード入力やタップのタイミングにランダムな遅延を混ぜ、人間の操作らしさを装うことで行動ベースの不正検知を回避します。
References:The Register
従来の「速すぎる連続入力=ボット」検知を逆手に取り、資格情報の窃取、画面配信、入力ハイジャックなどを実行。
金融詐欺向けにMaaS(Malware-as-a-Service)として流通しているとされます。
何が新しいのか:遅くする攻撃
研究各社の解析によれば、Herodotusは入力ルーチンにランダマイザを組み込み、キーの間隔やスワイプ速度を人間のバラつきに近づけます。
これにより、モバイル銀行や不正対策ソフトが用いるタイミング・ヒューリスティクス(機械的で一定間隔の入力を検知する手法)を回避。
結果として、デバイス乗っ取り(DTO)や遠隔操作による送金まで到達し得ます。
キャンペーンはイタリアやブラジルで観測され、背後には既存の犯罪グループ(Brokewell系と推測)がいるとの指摘もあります。
できること:窃取・可視化・介入
- 資格情報の奪取:
キーログ、フォームのオーバーレイ、クリップボード監視などでID/パスワードを吸い上げ。 - 画面配信と入力ハイジャック:
画面ストリーミングとAccessibility Serviceの乱用で、被害者の操作に割り込んで実行。 - 行動の“演出”:
ランダム遅延により、人の手による誤差を再現。
自動化特有の“機械的リズム”を隠蔽。
ポイント:SMSワンタイムパス(OTP)の盗み見から、端末そのものの遠隔操作(DTO)へ——攻撃の主戦場が上流化しています。
どう広がるのか:MaaS化とドロッパー
Herodotusはマルウェア市場で貸し出されるMaaS形態で流通し、スミッシング(SMS誘導)やサイドローディング用の“ドロッパー”経由で配布されます。
近年は、従来の銀行トロイに限らずSMS窃取・スパイ系をばらまくケースも増加。
“アプリっぽい”見た目と格安広告が合わさって、非IT層へ浸透しやすいのが現実です。
背景トレンド:モバイル脅威の底上げ
2025年は各社の統計でもモバイル脅威の急増が確認されています。
Malwarebytesは年初来151%増を報告。
Kasperskyの四半期レポートでも、モバイル向け攻撃の阻止件数が1,071万件(Q2)、うち銀行トロイが目立つとされます。
防御側の検知強化に対し、攻撃側は“人間らしさの模倣”で応戦している構図です。
リスクの実像:見た目は正常の危険
- 目視監査の限界:
スクショ化やPDF化で生成情報を隠す、入力のランダム化で行動検知を回避——可視指標が当てにならない局面が増えています。 - MFAの形骸化:
DTOでは利用者本人の画面・文脈を踏まえて操作できるため、SMS-OTPやプッシュ承認の“人力の壁”が薄くなる。
いますぐできる対策(個人)
- アプリは公式ストア限定:
提供元・レビュー・公開日を確認。外部APKは原則禁止。 - 権限の棚卸し:
Accessibility/画面上に重ねて表示を常時許可しない。
不要アプリは削除。 - MFAの強化:
SMS-OTPより認証アプリ(TOTP)、可能ならハードキーへ。
同一端末上の承認は避ける。 - Google Play ProtectをON:
警告は無視しない。
未知のアプリは即スキャン。 - 銀行アプリの“異常”に敏感に:
勝手にポインタが動く/画面が一瞬暗転などは遠隔操作の兆候。
すぐネット遮断→端末再起動→公式サポートへ。
組織向けチェックリスト
- MDMでの権限制御:
サイドロード禁止、Accessibility・オーバーレイの監査、未知ソース遮断。 - MDR/MTDの導入:
DTO/画面共有の検知や不審トラフィック遮断を端末側で。 - ゼロトラストの前提化:
端末健全性(OS/パッチ/ルート化)をアクセス判定に組み込む。 - 決済・財務の分離:
承認端末と実行端末を物理・論理で分ける(同一端末完結の業務は避ける)。
金融アプリ側への示唆:速さ検知だけでは足りない
Herodotusは人間の“もたつき”を模倣するため、速度・頻度だけの行動モデルでは脱落します。
指の軌跡の揺らぎ、加速度パターン、視線代理信号(スクロールの間合い)など多変量の行動生体と、サーバ側の取引文脈(設備・地理・履歴)を総合評価する必要があります。
さらに在席確認(対話式チャレンジ)や高額時の“アウトオブバンド承認”を標準装備すべきです。
まとめ
- Herodotusは入力タイミングのランダム化で人間らしい挙動を再現し、行動ベースの不正検知をすり抜ける。
- 配布はMaaS化し、ドロッパー/スミッシングを通じて拡散。
攻撃はSMS傍受からDTOへと上流化している。 - 2025年はモバイル脅威が全体に増勢。
個人・企業・金融の三者が、権限管理/行動生体の多層化/アウトオブバンド承認で対抗する段階に入った。



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