Box共同創業者でCEOのアーロン・レヴィは「AIエージェントがエンタープライズSaaSを置き換えることはない」と強調しました。
References:TechCrunch
決定論的(エラー許容が低い)コア業務はSaaSが担い、AIエージェントはその上に“重ねる”——この“教会と国家”的な役割分担がこれからの標準になる、という見立てです。
さらに、人間ユーザーより100〜1000倍の数のエージェントが稼働する未来を想定し、料金体系は「席課金」から利用量ベースへと語りました。
報道の要点
- SaaSは残る。
コア業務はSaaSで厳密に管理、AIエージェントは意思決定支援や自動化を“上乗せ”。 - 価格の大転換。
エージェントは“ユーザー数”の枠を壊すため、使用量・成果基準に移る。 - スタートアップ好機。
レガシーの制約がないエージェント・ファースト設計が刺さる。
文脈:レヴィが一貫して語る「コンテキストの時代」
レヴィは以前から、モデルより“コンテキスト(文脈データ)”が差別化の源泉と発信してきました。
ユーザ履歴・ワークフロー・機密を正しく束ねられない限り、AI製品は差別化できないと。
また、どの業務を決定論的に固定し、どこをエージェントに委ねるかという“線引き”が重要だとも述べています。
現場課題としては、データ準備(セキュリティ/権限/来歴)こそ最大のネックだと繰り返し指摘。
価格モデルの再発明——席課金から「利用×ボリューム」へ
もしAIエージェント数が人間の100〜1000倍に膨らむなら、席課金は成立しません。
レヴィは「利用量ベース(コンシュンプション)への転換」を示唆。
CFOにとっては“1席=1人”の直感が崩れるため、課金単位(APIコール/処理トークン/完了タスク/節約時間)の再設計が必須です。
現実には多くの企業が“エージェントの料金を誰が負担するのか”で迷っています。
社内吸収か、部門配賦か、最終顧客への転嫁か——価格の責任境界を早期に決めないと採用が進みません。
【実務ポイント】
- KPI=席→“成果/使用量”に置換。
例:処理件数、一次回答率、TAT短縮、誤処理削減。 - SLAも二層化。
下層SaaSは可用性中心、上層エージェントは正確性・説明可能性を指標化。 - 見積もりは“ピーク負荷×上限”で——“突発的なエージェント暴走コスト”の天井を決める。
アーキテクチャの二階建て——「決定論」と「エージェント」を分ける
下層(SaaS):
監査・権限制御・記録の厳密性を担保。RBAC/ABAC、監査ログ、データ来歴が中心。
上層(エージェント):
要約・推論・自動操作を担い、安全柵(ガードレール)で挙動を制御。
この二階建ては、レヴィの言う“何を固定し、どこを非決定論にするか”の設計論そのものです。
【実務ポイント】
- ツール権限は“最小権限+可観測性”。人間の承認ループを段階的に外していく。
- プロンプトは構成管理(版管理・審査・ロールバック)。
- データの“場所”を決める。“散らばった共有フォルダ”はエージェントの敵。
Go-To-Market(GTM)の変容——セールスは“業務の置換率”で語れ
従来の「席数×年額」ではなく、“ある業務を何%自動化できるか”を定量で提示する必要があります。
レヴィは“エージェントはSaaSの上で動く”と繰り返しますが、営業メッセージは“自動化率×安全性”の二軸が要点です。
また、“数百のエージェントが企業内で常駐”という近未来像を踏まえると、マーケットプレイス/編成(オーケストレーション)の価値が高まります。
【実務ポイント】
- PoCは“3週間×1業務”。TAT短縮・一次回答率・人的工数削減をビフォー/アフターで提示。
- “人×AI”の運用設計(ハンドオフ条件、失敗時の自動停止、監査)を提案書の中核に。
- 分科会ではなく“現場導入”の場へ。導入1か月で本番影響のない範囲から自動実行。
人と雇用への影響——置換ではなく役割の刷新
レヴィは以前から「AIは多くの職務を再設計するが、職業そのものを一気に消しはしない」と位置づけています。
現実の価値は、業務をどう設計し直すかで決まる。
セールス、法務、プロダクトは出力が増える方向に進む、という見方です。
CIO/プロダクト責任者の90日アクションプラン
- データの棚卸し:
機密度×来歴×権限で“AI利用可否マップ”を作る。 - ユースケースの選定:
決定論=SaaS、探索・要約・自動操作=エージェントで線引き。 - メトリクス定義:
席→利用量/成果KPIへ。コスト天井と誤処理許容を事前合意。 - 安全柵の実装:
承認フロー、失敗時の停止、完全監査ログ。 - 価格の説明責任:
“誰がどの費用を負担するか”を会計設計に落とし込む。
まとめ:上に乗るAI、芯を守るSaaS
今回の発言の肝は、SaaS vs. AIの二者択一ではなく“二階建て”の共存だということ。
SaaSは信頼性を担保する土台、AIエージェントは価値創出の加速装置。
席課金から成果課金へ、管理から編成へ、導入から再設計へ。
この3つのベクトルに乗れた企業が、エージェント時代の勝者になります。



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