11月4日(インド標準時)、NDTVは「出社をやめても3か月誰も気づかなかった」という体験談がレディットで話題になったと報じました。
References:NDTV
投稿者は当初“週2日出社”の社内方針に従っていたものの、「結局スラック(Teams)を使うだけのために通勤している」と気づき、電車遅延を機に在宅に戻ったが、業務成果や応答速度が維持されていたため社内で問題視されなかったという内容です。
上司からはむしろ「最近とてもエンゲージしている」と褒められたとも。
ネット上では賛否と共感が渦巻いています。
何が起きたのか
投稿の要旨はこうです。
①会社が週2日の出社を要請
②数週間は従ったが半分空いたオフィスでZoomミーティングするだけ
③ある朝の電車遅延をきっかけに出社をやめ、在宅で期限遵守・即応を継続
④3か月経っても誰も気づかない
⑤“教訓”として「プレゼンス=Teamsでの素早い返信のことらしい」とまとめた——。
この“即応=存在感”という割り切りは、多くの企業が抱える“プレゼンスの測定問題”を象徴しています。
ネットの反応と職場のリアル
コメント欄には、「月1でドーナツを置いて“来てます”感を演出せよ」といった冗談から、「バッジ(入館)だけ通してすぐ帰る」という“ルール順守の最小化”まで、現実的・皮肉混じりの体験が多数寄せられました。
有能ならリモートが最適、そうでなければ解雇でよいという極端な意見も目立ち、RTO(出社回帰)をめぐる価値観の分断が浮き彫りです。
データで見る現在地:オフィスは「満員」ではない
米主要都市のオフィス入館率は概ね50%台前半で横ばい。
カッスル・システムズの“Back to Work Barometer”では、10都市平均が約54%前後で推移し、都市間の差は大きいもののフル回帰には遠い状況です。
商業不動産の分析でも2025年の平均は51~54%とされ、“混み合う特定の曜日(火・水)”以外は空間に余裕があるのが実態です。
研究知見:ハイブリッドは「生産性マイナスなし」、離職率は改善
スタンフォード大学・ニコラス・ブルームらの大規模実験(Nature, 2024)では、週2日在宅のハイブリッドは生産性・昇進率に悪影響なし、離職率は大幅改善という結果。
2025年の調査でも、新たなRTO強制を計画する経営者は12%にとどまると報告され、ハイブリッドは“新常態”との見立てが強まっています。
一方、マイクロソフトのWork Trend Index(2025)は夜間・週末の“後ろ倒し労働”が増加している実態も示し、柔軟性の裏側に仕事の拡張が潜むことを示唆します。
なぜ「気づかれなかった」のか:測定指標のズレ
多くの職場は依然として“目に見える行動”(入館・常時オンライン・会議出席)をプレゼンスの代替指標にしがちです。
しかし今回の事例のように、成果(デリバラブル)と即応(SLA)が揃えば、“所在”は判別しづらい。
“バッジだけ通す”といった“見かけの順守”が出るのも、指標が行動寄りだからです。
“出社=協働の質が上がる”を本気で証明したいなら、成果・学習・関係資本にひも付く指標へ移行する必要があります。
企業向け:RTO時代のプレゼンス設計5か条
- 成果主義の粒度を上げる
プロジェクトごとに定量の成果物(例:PRD完了、MR数、MQL、修正リードタイム)と期日を定義。
週次で障害理由と是正をレビュー。 - 即応はSLAで明文化
「勤務時間帯にチャット30分以内/非コアは半日以内」など応答SLAを定め、“即レス圧”を防ぐため非同期可を同時にルール化。 - 会議を“価値で”測る
会議は目的・前提資料・決定事項をテンプレで残し、決定率(議題あたり)や会議後の実装率をKPI化。
滞留会議の削減を評価に反映。 - 対面の“勝ち筋”を可視化
設計ワークショップ・1on1・キックオフなど対面が効く場面をカレンダーで“固定イベント化”し、“行けば得をする日”を作る。 - “バッジ・シアター”の抑制
入館だけではなく、現地で行った共同作業・決定事項を簡易ログ化。
“在席時間≠貢献”の前提を文書で共有する。
従業員向け:静かに見える化する自己防衛
- 成果ログを持つ:
週報にデリバラブルと影響(KPI)を1枚で。評価会議で所在ではなく成果を示せる。 - “出社ROI”を設計:
顔合わせ・難所の合意形成・メンター面談など、対面だからこそ進むタスクを前もって束ねて訪社。 - 境界管理:
夜間・週末に仕事がにじむ場合は、SLAと“Quiet Hours”を合意し、MTTR/MTTAなど応答系の数値目標に置換して守る。 - リスクの理解:
就業規則やRTO方針に反すれば人事リスクになりうる。自己判断の“黙殺”は最終手段と心得る。
「オフィスは何のためにあるのか」を再定義する
RTOの理由はしばしば「偶発的な学び」「同時協働」「関係構築」に置かれます。
ならば、その効用が可視化される設計(成果とセット)が必要です。
10都市平均で5割強の入館率という現実は、“毎日全員”モデルの限界を物語ります。
曜日集約・チーム自律のハイブリッドにこそ、オフィスの価値(厚いつながり・速い合意)の最大化余地があります。
まとめ
今回の話題は、“居場所”で測るプレゼンスの時代が終わりつつあることを映します。
成果(Value)×即応(Service)×対面の設計(Occasion)でプレゼンスを再定義し、夜間に滲む労働を防ぎつつ、対面の強みを“計画的に”回収する——。
企業も個人も、測るものを変えるところから始めるべきです。



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