置き去りにされたのは「子ども」と「まなざし」だった――文京区個室マッサージ12歳少女、人身取引疑いの衝撃

事件

東京都文京区の個室マッサージ店で働かされていたタイ国籍・12歳の少女が保護され、警視庁は店の経営者の50代男性を労基法違反(15歳未満の就労禁止)容疑で逮捕

同庁は人身取引(Trafficking in Persons)事案の可能性として実態解明を進めています。

少女は母親とともに6月下旬に入国した後、店に残され、のちに出入国在留管理局へ自ら相談に訪れたことで事件が発覚しました。

朝日新聞は6日朝この経緯を伝えています。英字メディアやテレビ各局も相次いで報道。

「文京区の店舗」「経営者の逮捕」「人身取引として捜査」という骨子で一致しています。

断片から見えるタイムライン

報道を総合すると、少女は6月下旬に短期滞在で来日し、店内で生活しながら客の相手を強いられていたとされます。

9月に本人が東京出入国在留管理局へ相談し保護

11月4日に経営者が逮捕、6日に各社報道が出そろいました。

別媒体は「約1カ月で60人超の接客」「売上は関係者口座に送金」との捜査筋説明も伝えています(数値は捜査段階の推計)。

どこが犯罪なのか――適用されうる法規

最初に適用が明示されたのは労働基準法56条

「満15歳に達した日以後の最初の3月31日まで、児童を使用してはならない」と定め、例外は極めて限定されます(映画・演劇等の許可制など)

加えて、本件の中核論点は人身取引です。

日本政府は行動計画(2022)を掲げ、性的搾取・労働搾取を目的とした取引の取り締まりと被害者保護を強化するとしています。

国際的にも米国の人身取引報告書(2024)が、日本の課題として児童の性的搾取認知向上や実効的保護を継続提言。

今回のように未成年の外国人が店舗に“囲い込まれる”態様は、最も強い警戒対象です。

「最年少級」の衝撃と、私たちが見落としていたもの

英字報道は、東京で扱われた外国人被害として最年少級との警察説明を紹介しました。

仮に事実であれば、日本社会が最も守るべき層(12歳)の安全網に穴があったことを意味します。

短期滞在での入国→私設空間での就労→転々とした就労の紹介→本人の自己申告で発覚という経路は、学校・地域・行政の視線が届きにくい“死角”の連鎖でした。

「密室化」する私設サービスと検知の壁

個室型の“マッサージ”や出張サービスは表看板と実態が乖離しやすく、看板の更新・店名変更・短期賃貸で足跡が薄くなりがちです。

未成年の孤立(学校不在・言語不安・在留の不安定さ)が重なると、第三者の通報が唯一の突破口になることも。

今回も本人の駆け込みが直接の端緒でした。

制度面のチェックポイント

  • 許可制度と監督
    業態の名目にかかわらず、実態が未成年就労に当たらないかの横断点検。
    深夜業・年少者就業制限の周知徹底が前提です。

  • 早期発見の窓口
    出入国在留管理局・警察・児童相談所多言語ホットラインに速やかにつなぐ。
    被害疑い時は“まず安全確保”を原則に。

  • 事業者の責任
    賃貸・間借り物件の「反社会的利用」特約の強化、決済・送金のモニタリング、プラットフォームの出店審査も抑止に寄与。

  • 学校・地域
    不就学・行方不明の未成年の把握、日本語教育・相談先の周知。
    「声が届く」回路を作る。

被害者保護は発覚後が本番

カウンセリング、医療、法的支援、通訳、在留の安定化、母国帰還支援をワンストップで。

日本の公的情報も「人身取引は身近でも起きる」として相談窓口を案内しています。

被害者中心(victim-centered)の原則に立ち、事情聴取も二次被害を避ける手順が求められます。

メディアの役割と報じ方

年齢・国籍・“性的文脈”を含む報道はセンセーショナルな語り口ほど拡散しやすい一方、本人の尊厳を損なう危険があります。

今回の各社報道は、“労基法違反逮捕”という法的事実の骨組みを先に置き、人身取引の疑いは捜査の進展として慎重に位置づけました。

数字(客数や売上)についても「捜査段階の推計」である旨の説明が添えられています。

なぜ「また起きる」のか——構造的な理由

  • 需要側の匿名性
    個室・現金・短期滞在の三点セットは追跡困難

  • 供給側の回転
    店名変更・間借り・多店舗で履歴が薄い。

  • 周辺のグレー領域
    “マッサージ”表示と実態の乖離SNS・メッセンジャー経由の客引き。

  • 脆弱な立場
    外国語話者・未成年・同伴者依存の三条件が重なると支配構造が固定化しやすい。

私たちにできること

  1. 疑いを見たら110番・各窓口へ
    未成年の就労・夜間帯の出入り・店内居住などの兆候があれば通報を。

  2. 拡散の節度
    SNSでの憶測の連鎖は被害者の二次加害につながる。公的情報と一次報道を確認する。

  3. “安さ・匿名・刺激”の裏側を考える:
    需要側の無自覚が搾取の燃料になり得ます。

まとめ

今回の件は、「日本でも人身取引は起きる」という現実をあらためて突き付けました。

労基法違反の入口で逮捕→人身取引の実体解明へという捜査の流れは適切です。

焦点は、(1)組織的関与の有無(仲介・送金)、(2)被害者の長期的ケア、(3)同様手口の再発防止

“密室化する私設サービス”の死角をどう減らすかが、次の政策と実務の課題です。

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