11月6日、自然保護団体の日本熊森協会が都内で会見し、環境省と農水省に対しクマ出没対策の見直しを緊急要請しました。
骨子は「捕殺一辺倒では限界」「子グマを殺さない方針」「地域での被害防除(出没させない・近づけない)への予算重点化」です。
会見と要望書の提出は弁護士ドットコムニュースが詳報し、Yahoo!ニュースにも配信され話題化しました。
References:Yahoo!ニュース
一方、政府側は10月30日に初の「クマ対策・関係閣僚会議」を開催し、市街地でも発砲を可能にする「緊急銃猟」の周知・拡大や専門人材の確保など、即効性のある捕殺・排除の仕組みを打ち出しています。
背景:被害は最悪水準へ
環境省と報道各社の集計では、2025年度のクマによる死亡者数は13人に達し、統計開始以来の最悪水準となりました(速報ベース)。
10月末には「12人」、11月5日時点で「13人」と更新報道が相次ぎました。
また被害の約3分の2が『人里』で発生しており、秋以降は“山中”よりも“生活圏”のリスクが上回る実態が可視化されています。
出没・被害・捕獲の速報値は環境省が月次で公表し、今季の異常な出没増と捕獲増が確認できます。
熊森協会の主張:方針転換の3要点
- 「捕殺だけでは限界」
個体の“除去”偏重では再出没が続き、根本解決にならない。 - 「子グマを殺すな」
母子分離や子グマ射殺は長期的な個体群管理や社会的受容性を損なう。 - 「被害防除への投資」
緩衝帯整備、餌資源管理(放置果樹・残飯・野積み農産物)、追い払い(ベアドッグ・電気柵・光音威嚇)など、“近づけない・寄せつけない”対策に予算を回すべきだと提案。
政府パッケージ:即効性のある入口対応
政府は緊急銃猟の運用拡大、警察官や有資格の公務員の協力体制、ガバメントハンター等の人材確保を加速。
生活圏に入った個体を速やかに排除・駆除する“入口”の即応力を強化する方針です。
何が噛み合い、どこがズレているか
- 噛み合う点
両者とも「人命・生活圏の安全最優先」で一致。
政府の即応(緊急銃猟・人材)と、熊森の中長期の被害防除(緩衝帯・餌資源管理)は本来、補完関係にあります。 - ズレる点
優先度と資源配分。
政府は直近ピーク(秋)に合わせた緊急対応を重視、熊森は来季以降の“寄せない仕組み”を前倒し投資する主張。
子グマの扱いは社会的合意形成が難所で、人身被害の増加局面ほど議論が先鋭化します。
データで読み解く人里リスクの現在地
- 被害の66%が人里(2025年度):
出没地の都市近接化が進んでいる。
放置果樹・農地残渣・生ごみなど人由来の餌、空き家・資材置場等の隠れ場が誘引要因。 - 死者13人(速報):
前年の倍以上。
“遭遇そのものを減らす”視点(歩行動線・通学路・山際の生活排水・農作業時間帯)を自治体単位で設計する必要がある。
実装の論点:自治体・現場が決める5つのKPI
- 侵入率:
集落外縁の痕跡(足跡・糞・爪痕)検知件数。 - 誘引物削減率:
放置果樹/残飯/野積み農産物の撤去率・回収頻度。 - 緩衝帯整備率:
藪刈り・見通し確保・電気柵稼働率。 - 通報→出動の平均時間(MTTA):
緊急銃猟・追い払い隊の初動速度。 - 学校・高齢者向け啓発の到達率:
見守りルートやゴミ出し時間の再設計。
これらは捕殺か否かの二択ではなく、即応×防除の組み合わせを“見える化”する管理指標です(数値は自治体が定義)。
「子グマを殺さない」方針への課題整理
- 識別の難しさ:
現場で子か成獣か、母子帯同か単独かを瞬時に判定するのは難度が高い。 - 学習と再出没:
非致死的追い払いは運用を誤ると“人=無害”学習を招き、後の致死的事故リスクを増やす可能性。 - 社会的受容性:
死亡・重傷が続く局面では、“保護”のメッセージが反発を招きやすい。
→ よってゾーニング(人里:即応、山際:防除強化、山中:生息環境管理)を地図ベースで公開し、発砲基準・非致死的手段の運用基準を自治体が明文化することが鍵です。
市民の行動ガイド
- 誘引物ゼロ:
生ごみは前夜出し禁止、簡易ロックや防獣コンテナへ。 - 可視性の確保:
藪の刈り戻し、通学・通勤ルートの見通しを共同点検。 - 遭遇時の原則:
背を向けない/走らない/視線を外す/距離を取る。 - 通報の徹底:
足跡・糞・爪痕を見つけた時点で自治体・警察へ。
まとめ:二者択一ではなく両利きで
- 事実:
熊森協会が「捕殺一辺倒の見直し」を要請、政府は緊急銃猟や人材で即応力を強化。
死亡者は13人(速報)で過去最悪。 - 論点:
短期の即応(入口)と中長期の防除(根本)をどう配分するか。
子グマ対応は識別と安全性の運用設計がカギ。 - 提案:
KPI化と地図公開で、“どこに何を、いつまでに”を明確に。
即応×防除の両利きが、来季の人身被害を減らす最短距離です。



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