2025年10月31日、ブラジルのTecnoblogは、Uberのダラ・コスロシャヒCEOが「20年余りで“すべてのクルマが自動運転”になり、運転は乗馬のような趣味になる」との見通しを語ったと報じた。
References:Tecnoblog
人間より機械の安全基準を厳しくすべきだとも主張し、将来、一般道での“人の運転”を制限する是非が社会の論点になると指摘した。
過去にはCruiseの元CEOカイル・ヴォクトも、ロボタクシーが人より100倍安全なら人間の運転禁止を支持すると発言している。
どこで語られたのか
この発言は、Axel Springerのマティアス・ドプフナーとの公開対談で述べられたもので、「運転スキルはやがて乗馬のようなものになる」という比喩や、「機械は人間以上の安全基準で扱われるべき」という論点が再確認された。
“20年+”という時間軸もあわせて示されている。
人間の運転禁止論は突飛か
ヴォクトは2023年、「ロボタクシーが100倍安全なら、人より危険な“手動運転”を都市で許す理由はない」と発言した。
たしかに挑発的だが、前提は“圧倒的な安全差”の実証である。
Cruiseはその後、カリフォルニアで運行許可を停止され、経営も揺れた。
安全実績の蓄積と透明化は、技術の商用化に不可欠だ。
現実はどこまで来ているか:Uber×Waymoの拡大
大胆な未来像に対し、足元の進捗は着実だ。
UberはWaymoのロボタクシーをUberアプリ内で配車できる提携を拡大し、2025年初頭からオースティンとアトランタで本格展開。
エリアは約65平方マイルから開始し、価格帯はUberX等と同等、解錠や発車はUberアプリや車載タッチ画面で行う。
Waymoの単独アプリではなくUber独占で始まった点も象徴的だ。
Uberの自社開発しない戦略
Uberは自ら自動運転スタックを作るより、世界の有力ロボタクシーを束ねる“卸・ハブ”を目指している。
2025年夏には、ロボタクシー拡大のための外部資金調達や車両調達・収益分配・ソフト使用料など複数モデルを検討していることが報じられた。
固定費を抱えずに供給を増やすという、プラットフォーム型の王道を突く形だ。
乗馬化は何を意味するか:所有から利用へ
自動運転×配車が広がるほど、都市部ではマイカー所有の必然性が薄れる。
車両稼働率の上昇は移動の単価低下につながり、駐車場や路上スペースの再配置、公共交通のフィーダー化など、都市設計を再編する。
コスロシャヒは保有台数の減少と安全指標の改善を予見しており、これはUberの需要獲得(ライド+デリバリー)戦略とも整合的だ。
ただし「どこでも走れる」には遠い
現行のロボタクシーは、ODD(運用設計領域)が厳密に定義され、特定エリア・特定条件での運行に限られる。
アトランタ開始時も空港・高速は対象外で、都心〜近郊の区画に限定された。
広域・全天候・全道路へと拡張するには、センサー冗長化・悪天候耐性・高度地図の自動更新・V2Xなど、技術とインフラの両輪が要る。
安全のものさしをどう統一するか
人 vs. 機械の安全比較は、単なる死亡率だけでなく、走行距離当たりの事故種別・回避率・ヒヤリハットまで含めた統一指標が必要だ。
行政は運行停止・再開プロセスの透明化と、ログ開示・独立監査の枠組みを整える必要がある。
Cruiseの停止事例は、問題発生時の迅速な是正と説明責任が不可欠であることを示した。
供給サイドの覇権争い:Waymo、Zoox、Tesla、そして地域連合
米国ではWaymoが先行し、ZooxやTeslaも追う。
都市によって規制・地理・交通文化が異なるため、都市別の勝者が併存する可能性も高い。
最近はLyftやUberが複数の自動運転スタックパートナーを抱え、アプリ一つで“人+ロボ”を横断できる体験を作りにいっている。
労働と移行期の現実
“乗馬化”が進めば、プロの運転労働は監督・保守・遠隔支援へとシフトする。
移行期には混在交通(人とロボ)で新種のリスクが生まれるため、教育・標識・インフラの更新が要る。
夜間や低需要帯はロボ、ピーク帯は人+ロボの混成など、段階的な需給最適化が現実解になるだろう。
20年スパンは妥当か:技術・規制・資本の三重奏
技術は前進しつつ、規制は慎重、資本は選別的——これが現在地だ。
Uberは外部資金や共同事業を梃子にスケールを優先し、車両オペは提携先に任せる分業を進める。
大量導入の資本負担を抑えられれば、運賃の低下と普及が加速する。
したがって“20年”は都市圏の主要回廊で現実味がある一方、地方や悪天候地帯ではもっと長くかかる見立てが妥当だ。
もし人の運転を制限するなら
仮に人の運転制限が議論に上るのは、①圧倒的安全差の立証、②保険・責任の再設計、③公平な移動アクセスの確保が満たされた後だ。
まずは中心市街の限定区画から時間帯・用途を絞って始まり、タクシー・配送・公共交通がロボ主体に置き換わる順番が考えやすい。
編集部の視点:Uberの勝ち筋
- アプリ主導の需要統合:
人+ロボを同一UXで出し分け、稼働率とCSを同時に引き上げる。 - 都市ごとの“ローカルM&A”:
Waymoなどローカルで強い自動運転スタックと組み、規制・運用の地の利を獲得。 - 資本節約のスキーム:
リース/レベニューシェア/ソフトライセンスを組み合わせ、フリートの増殖に対応。
まとめ
「将来の運転は乗馬のようになる」という挑発的な比喩は、“運転=必要”から“運転=嗜好”への価値転換を突いている。
とはいえ、全域・全天候・全道路の自動運転にはなお距離がある。
Uber×Waymoのような局地的成功をどれだけ多都市に複製できるか、そして安全指標の共通言語を作れるかが、“乗馬化”の速度を決める。
20年スパンの道のりは長いが、アプリにロボが並ぶ現実はすでに始まっている。



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